「魔法の時間」を過ごしているような感覚。 (インタビュー : 金子佳史 『TUNNEL』)

日時:2019.09.016
取材:山口大地
撮影:金子佳史
編集:田中凱、山口大地

金子佳史、山口大地

2018年5月にONOONO第2回公演の演者として参加した金子佳史。
彼の第3回公演『TUNNEL』に向けての思いや、普段の日常について聞いてみる。

「魔法の時間」を過ごしているような感覚。

金子佳史

–第2回公演『RIGHT NOW』で「ここが楽しかったところ」を教えて下さい。

金子佳史:小屋入りしてからですね。舞台づくりから本番を迎えてそれが終わるまでの時間。リハーサルや舞台づくりで一日中会場にこもるこの期間が好きなんです。最も非日常性を感じる瞬間ですね。

本番目の前にして追い込まれているけど、楽しいんですよ。全員真剣で、集中してる感じが好きで。だから、仕事と全くかけ離れた非日常感を強く感じるのが、この小屋入りした時。なんというか、「魔法の時間」を過ごしているような感覚。変な言い方ですが、本番前のこの時間を味わうためにダンサーやってるようなもんです。

–第2回公演『RIGHT NOW』ではソロ作品も出しました。実際に踊って、どう思いましたか?

金子佳史:今までのダンサー人生で、ソロの振付を決めて臨むっていうのが初めてで、最大の挑戦でした。あの時は、即興の素晴らしさではなく、練りに練ったものを見せたい気持ちがあったので、構築したものを見せるスタイルにしました。

なにより一番強く感じたのは、「お客様のあたたかさ」ですね。自分が思ってたよりも反応があって笑ってくれましたし、歓声もくれて嬉しかったです。

–第2回公演『RIGHT NOW』を経て、次に活かしたいな、と思っているところは?

金子佳史:この公演づくりを経て、自分たちのアイデアとか、発想力には自信を持てました。なので、次は技術をもっと魅せたいなと思ってます。ダンサーとして、ダンスそのもののクオリティを上げて、説得力と深みを出していきたいです。

黙々とやっていても伝わらないこともあるんですよね。真価を伝えきれず終わってしまう。

小林新、中谷太郎、金子佳史

–では、第3回『TUNNEL』について。ONOONOとして活動を通して、様々な舞台を踏んだ上で第3回公演『TUNNEL』に臨みます。個人的に挑戦したいことはありますか?

金子佳史:お客様の目線に立って、どう伝わるか、を考えた作品づくりですね。実はこれ、仕事の中で考えつきました。

–仕事の中で?どういった経緯でそうなったんですか?

金子佳史:今、所属している勉強会で主宰するセミナーのポスター製作をしていまして。日本だけでなく海外からも受講する先生方がいるような大規模なセミナーなので、外向けの魅力的なポスターを作らなければならないんですよ。そこで広告について勉強・研究していると、気づきがありました。

どれだけこだわっていて、どれだけ内容が良かったとしても、人の目に留まるのがまず重要、ということです。

ポスターなんか特に、デザインにこだわって細かく作ってるものが、必ず目に止まるとは限らないんですよ。とりあえず他の人のポスターをいくつか並べて見てみることしたんです。それで気付いたことがありました。デザインの技術とか、親切さとか、色とか、いいなと思ってたポスターと、ズラッと並べた時に目に留まるポスターって違うものだったんですよ。

ダンスにおいても、まずは作品に興味を持ってもらって、世界に入り込んでもらう事が重要。自己満足の作品だけではいけないなということに気が付きました。

–技術が高くても、人に伝わらなければ駄目。

金子佳史:そうです。僕ら歯科業界でも同じで、技術があっても、広告をうたなければ、患者さんはこない。自分のこだわりをお話しなければ伝えることができない。

黙々とやっていても伝わらないこともあるんですよね。真価を伝えきれず終わってしまう。これはダンスにおいても同じだと思います。

田中凱、金子佳史

–では、この経験から得た気付きは、今回の公演において、具体的にどのように活きていますか?

金子佳史:今までの作品は、自分のやりたいことだけを詰め込んだものにすぎませんでした。だけど、お客さんとのコミュニケーションが取れていないと意味がないという考えに行き着きました。

なので今回の僕の作品は、難しさで凝り固まった作品から、少し間口を広げた作品へと進化を遂げたと思います。ただ、こだわりは全く捨ててませんけどね。

まずは入ってきてよ、ってお客さんを世界観に引き込んで、そのあとはとんでもない体験をしてもらう。あれ?これって悪徳商法みたいですね(笑)。

そうです、今回TUNNEL公演は、ONOONOらしい悪徳商法に仕上がったと思います。

妻から「君はいい意味で結婚前と全然変わったよ」っていってもらえました。

金子佳史

–少し別軸の質問をします。よっしーさんは、ONOONO唯一の既婚者で、お勤めの歯科医院では副院長を勤めています。とても多忙な中、ONOONOで表現する上で、行っている工夫やはありますか?

金子佳史:スキマ時間を上手く使うことです。僕はまとまった時間をとることができないので、移動中など、「これを表現にしたら」と、常に考えていて、落とし込めるようにしています。あとは、目的なく過ごすことをしないようにしてますね。今は何の時間?と常に自分の中に問いかけるようにしてます。

限られた稽古時間でも、時間に厳しくなることで、逆に洗練された稽古ができるようになりました。山ほど時間があった学生時代が1日24時間だったとすると、今は1日72時間あるような感覚です。まだまだ増やせると思いますけど。

–時間の使い方を突き詰めているのですね。よっしーさんはご結婚もされていて、奥様との時間も大切にされてますよね。

金子佳史:結婚は、最高ですよ。

–(笑)

金子佳史:付き合ってるのとはいい意味で違うんですよ。将来が見えてくるっていうか。僕は何歳で何をやる、年収いくら、何をやってる、子供何才、とか細かく人生計画を立てているんですが、2人でそれをつくるの楽しいですよ。あと、自分の中の常識って相手にとって全くそうでないことがあったり。ぶつかることもあるんですけど、そこでまた人として成長させてくれる。今年で結婚5年目になるんですけど、この前、妻から「君はいい意味で結婚前と全然変わったよ」っていってもらえました。

そして、自分のダンスについて素直に何も包み隠さず辛辣に評価してくれます(笑)。とてもいいフィードバックです。なので、僕にとっては家庭を持つということは制約ではなく、むしろプラス面ばかりです。まあ全てはこういった活動を許してくれる妻があってですけどね(笑)。

他人の目なんてどうでもよくて、「自分がどうなのか」なんです。

金子佳史

–よっしーさんは、メンバーで唯一海外でJAZZを初めとする様々な経験しています。海外でのダンス経験で得たものってなんですか?

金子佳史:枠組みを取っ払えたことですね。当時はまだ海外にダンスをしに行く人間があまりいない時に、単身飛び込びました。歯科大学の先生も理解出来ないといった感じでした(笑)。

その時に、表現に正解ってないんだなって気付いて。逆に日本で正しいとされていることが向こうでは全く受け入れられないこともあったり。自分一人で生きていくしか無い環境においては、他人の目なんてどうでもよくて、「自分がどうなのか」なんです。その日から他人と比べるのをやめました。

留学中に得たテクニックよりも、そのマインドが、後の自分を変えたと思います。

最後に

それではよっしーさん、皆様へメッセージをどうぞ!

金子佳史:今回の『TUNNEL』はちょっとオカルトチックで、とてもワクワクする内容になっています!是非観に来ていただいて、この意味を確かめてください!